NewsLetter

GWSからのNews Blogです

第二回ゴムの弾性について(ゴムはなぜのびる)
天然ゴムはゴムの木から水に分子が白く懸濁したラテックスとして採取される。このラテックスからゴムを分離してゴム状物質が得られる。これは輪ゴムと同じ色の生ゴムです。ゴム成分の他少量のタンパク質や脂質が含まれている。ゴムはイソプレン(A)という分子が5000個以上連なったひも状のゴム分子が沢山集まっているのが天然ゴム(B)です。

この天然ゴムはそのままでも伸ばすと弾力性があり伸びますが、伸びきってすぐに切れてしまいます。ところが硫黄を加えて架橋をすると力を入れるとどんどん伸びて行き、何百倍にも伸びます。しかし力を抜くと元に戻ります。これが輪ゴムです。ゴム特有だけにしかない特性です。このゴムと性質は今から200年も前の1806年John Goughと云う研究者が次のことを見出した。
(1)ゴムを伸ばして唇を当てると暖かく、しかし元に縮むと発熱はなくなる。
(2)伸ばしたゴムを加熱すると縮む
(3)ゴムより冷たい水の中では伸びたままであるが温度を上げると元に戻る。

当時はゴムの弾性についてはこの現象だけしかわからなかった。その後の研究でゴム弾性はエントロピー弾性ということでゴム特有な特性であることが分かりました。何倍にも伸びて、また元にもどるようなゴム特有な物性です。この弾力性はエントロピー弾性であことから説明付けられています。このほかに金属のような一般の弾性はエネルギー弾性といいます。伸ばすとエネルギーが蓄えられて放出されてもとに戻る。あまり伸びると変形していまいます。ゴムのようには伸びません。

ゴム分子は固体でありながら液体のように分子が自由に動いている物体です。図1はP.J.Flory(これでノーベル賞)が描いたものです。天然ゴムの場合にはー56℃までは液体状態になっています。生ゴムは(A)のように分子が多少絡まっているだけです。そのゴム分子の集合体の所々硫黄原子(●)によって架橋している状態です。これは網状になっているので伸びてみ一定以上は伸びません。

図1ゴムの分子の集合状態(P.J.Flory)
生ゴムの組織(A)   架橋ゴムの組織(B)
図1 ゴムの分子の集合状態(P.J.Flory)

架橋ゴムの組織からエントロピー弾性の説明をします。

図2架橋ゴム(B)が少し伸びた状態(C)
架橋ゴム(B)が少し伸びた状態(C)

エントロピーとは乱雑さの度合いともいい乱雑さは(B)が最も乱雑さがあるとしてエントロピーが大きい(⊿SB)状態に対して(C)は伸びているだけ(B)よりゴム分子が並んだ状態で(B)よりエントロピーが小さい(⊿SC)状態であると云います。

ところが熱力学からはエントロピーは大きい方が安定な状態であるといいますので、(C)の状態は(B)の安定な状態に戻ります。すなわちゴムは伸びることによりエントロピーの小さい状態になり、放すと安定なゴムの元の状態にもどるために、ゴム弾性がでることになります。
今回はゴム弾性について説明しました。わかりにくいですが、雰囲気を理解して頂ければありがたいです。

注)1.モノマーとはゴムやプラスチックを合成した時の最小の単位分子。
2.イソプレン(A)とは分子式ではCH2=C(CH3)-CH=CH2と書きます。Cは炭素原子、Hは水素原子、その原子が結合する場合には炭素には4つの手があり、水素は1つの手があるので、イソプレンという分子は2つの炭素原子と2つの手(二重結合という)で結ばれ、一つの炭素原子に-CH3(メチル基)という単位のグループが結合した分子
3.天然ゴム(B)は[-(CH2-C(CH3)=CH-CH2)-]の単位のモノマーが連結したもの。連結の数は5000個以上と沢山モノマー分子が連結している。

  • RSS
  • Delicious
  • Digg
  • Facebook
  • Twitter
  • Linkedin
  • Youtube