1.はじめに
田舎に住んでいる私は車のない生活は考えられない程マイカーにどっぷりと浸かっていますが都会では全く無関係で生活できている人もいるかも知れません。しかし、都内を移動する手段として少なくとも電車やバスは利用しているはずです。特に最近の電車やバスは乗り心地が良く眠っている間に目的地に運んでくれます。
一方、中村メイコが「田舎のバスはおんぼろ車・・・・」と歌っているように昔の車は本当に乗り心地が悪く天井に頭をぶつける程でしたし、電車は揺れが大きく吊皮が左右に振れて窓上方にある荷台に当たりとても賑やかでした。(私の年齢がばれそうですが)
もうお分かりのように私が話したいのは現代社会に乗り物が如何に必要不可欠であり、昔は移動する手段として活用しているだけでしたが今は乗り心地も素晴らしく進歩し、乗用車では運転すること自体を楽しめるようになりました。その理由はショックアブソーバー(以後SAと記す)の進歩発展が大きく関わっているからです。
2.ショックアブソーバーの役割
さて、車のSAはどんな役割を持っているのかについて述べる。車の乗り心地に与える振動には主に5種ある。図1にその種類を示すので参照のこと。
これらの振動を抑制するためにSAは働いる。
昔の車はバネで振動を吸収していたが振動がなかなか収束せず、次の振動が始まってしまい、いつまでも収束せず車に酔ってしまうことが多々あった。しかし、図2に示すようにSAを併用することによりそれは早期に収束するようになった。
即ち、バネが伸びようとする時、図3に示すようにSAは引き留める力が働く。また、それが圧縮しようとする時は上方に押し上げるような力が働く。これによって振動は収束方向に進む。
次にそのような働きをするSAの構造について説明する。
3.ショックアブソーバーの構造についてSAには単筒と復筒があり、ここでは比較的多く用いられている復筒について説明する。
図4にSAの概略の構造を示す。
(1)復筒の構造は外筒と内筒から成り、
内筒にはロッドの先端にピストンが装着され、内部にはオイルが満たされている。
(2)この油はショックアブソーバーオイル(以後SAFと記す)と呼ばれている。
(3)外筒の1/3~1/2程度にはSAFが充填されベース部のバルブによって内筒と通じている。
(4)外筒の残りの空間には圧力0.3MPa~1.0MPaの圧縮空気が封入されている。
(5)SAFはブッシュの上部にあるオイルシールゴムによって外部に漏れないように密封されている。
(6)SAは2940N(300kgf)程度の横荷重を受けるがピストンとブッシュによって受け、それに耐えられるように設計されている。
(7)ピストンロッドの上端部先端は車体に固定され、SAの最底部は車輪軸側に固定されている。
(8)車重はSAの外部に設置されたスプリングによって受ける。これによって先に述べたような振動収束作用が生じる。これが減衰力(以後DFと記す)である。
4.ショックアブソーバーの摩擦力について
車の重量は大体1、000kgf~2,000kgfである。この振動を
制御するため図5に示すような部位に設置されている。
(1)SAが摩擦する部位は①ピストン/内筒、②ロッド/ブッシュ、③オイルシール/ブッシュの3点である。しかし、横荷重を受けるのは①、②のみである。オイルシールはSAFと圧縮空気が漏れない役割のため摩擦しているのである。
(2)それぞれの摩擦力はSA全体の1/3程度であるが横荷重の大小と速度や振幅の大きさによって異なる。
(3)例えば街中を走行している普通のセダンタイプを運転している場合を想定するとストロークは比較的大きく10mm~50mmでありその速度は1~20Hzであり、特にマンホール蓋や交差点の歩道を示す白線等を乗り越えるときに発生する振動を如何に素早くしかも運転者に優しく制御できるかがSAの良否判定に大きく影響する。
(4)一方、高速走行ではストロ―クはとても小さく0.5mm~5.0mm程度であり、速度は40~60Hzである。高速道路を速度100km/hで走行中を想定すると振動は殆どロードノイズであるが、時々継ぎ目段差の振動もある。ロードノイズは微振幅であるためSAの摩擦力がとても大きく影響する。
5.SA摩擦力と乗り心地について
以下 次号に続く